※情報は、上場会社に関する情報提供のみを目的としたものであり、金融商品取引法に基づく開示資料や投資勧誘を推奨するものではありません。本記事及び本記事から得た情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等の一切について責任を負いません。投資は自己責任でお願いします。
コロナで釣りやキャンプなどアウトドア銘柄が伸びていますが、アウトドアアクティビディは天気に問題ないことが前提となり、必然的に天気予報を見る人の数は増えるはず・・・ということで天気銘柄を取り上げます。
ポイント
- ALiNKはtenki.jpを日本気象協会と共同運営し、サイト・アプリ運営、広告運営の側面から支援している会社であり、広告収入をほぼ半分ずつ分け合っている。
- 競合として他天気予報情報サイトやアプリが存在するがウェザーニューズの天気予報精度が最も高く強敵。
- 次の決算で今後の成長戦略について発表がある可能性が高いため成長戦略に期待したい。
基礎情報
【上場】 2019.12 【設立】 2013.3
四季報オンラインより
【本社】 162-0801東京都新宿区山吹町337都住創山吹町ビル
【従業員】 <21.5> 17名(41.5歳) [平均年収]513万円
【証券】 (主)野村(副)日興、三菱Uモル、SBI…
【銀行】 みずほ、三井住友、三菱U
【監査】 EY新日本
【仕入先】 ―
【販売先】 日本気象協会
従業員数は17名で平均勤続年数は2.5年とのこと。短いのでは・・・?年収は平均年齢と比較すると高いとはいえないようです。
経営者のプロフィール
代表取締役池田洋人氏
https://www.alink.ne.jp/mission/message/
大学卒業後、気象会社に入社。ヤフー株式会社に転職し、プロデューサー兼ディレクターとしてYahoo!天気情報のフルリニューアルを手掛ける。退社後、株式会社ありんくの取締役COOに就任し、Web事業部を立ち上げ、2013年に同社を起業した。
沿革
元々公益事業である日本気象協会が運営する気象情報サービスの営業支援という形からスタートし、現在の共同事業形態になっています。そのため、日本気象協会とALiNKの役割分担について業務提携契約書に記載があるためそちらも認識しておく必要があります。
日本気象協会では気象予報士と気象データを保有しているので、気象データとコンテンツに関わる部分を担当しており、ALiNKはサイト運営に関わるところや担当のようです。また契約手続きやサイト問い合わせは日本気象協会であることから、ALiNKによる営業支援の形が継続しているようにみえます。
株主構成
【株主】[単]1,209名<21.2> 千株
四季報オンラインより
池田洋人 815 (38.8)
松本修士 685 (32.5)
亀井友廣 51 (2.4)
松井証券 48 (2.3)
SBI証券 32 (1.5)
一般財団法人日本気象協会 20 (0.9)
野村証券 14 (0.7)
河田健 6 (0.3)
田畑聡志 5 (0.2)
永田克三 5 (0.2)
代表取締役である池田洋人氏が筆頭株主ですが、松本氏は2021年5月にて取締役CTOを退任しています。
ビジネスモデル
気象情報を提供するtenki.jpに掲載する広告収入がメイン。運用型広告が全体の90%を占める。ALiNKの場合、自社でアドネットワーク業者とやり取りしつつ自社で広告運用を行っているとのこと。具体例として、熱中症が高い地域に11時~13時に限定して清涼飲料の広告を出したり、雨が降っている地域でスマートフォンからのアクセスのユーザに対してゲームアプリの広告を出したり、桜の開花状況と地域を絞り込み、晴れている場合はアルコール飲料の広告を出す・・・など、天気マッチング広告を出しています。PV数が事業のKPIとなります。
日本気象協会とのレベニューシェアはALiNK:日本気象協会=49.5:50.5の割合。
※運用型広告とはアドテクノロジーを活用し、広告枠や入札額、ターゲットなどを変動させながら出向する方式の広告のこと。ex.リスティング広告、アドエクスチェンジ、DSP
競合分析
天気予報を発信するメディアは全て競合となります。
例えばiPhoneに標準搭載されている天気予報アプリも。
Googleで「天気予報」で検索すると一番上にウェザーニューズの天気予報情報が表示され、検索結果のトップがYahoo天気予報、その次にtenki.jpが表示されています。(2021/9/26時点)
iPhoneの標準アプリ
調べてみたところ、iPhone標準搭載アプリはアメリカのアトランタにある会社が予報情報を提供しており、日本の気象庁やウェザーニューズ、日本気象協会が提供する情報より精度が悪いようです。
参考:iPhoneの天気アプリは当たらないので別のアプリを使いましょう。
Yahoo天気予報
Yahoo天気予報では主にウェザーマップ社から気象情報データを取得しているようです。
確かにYahoo天気予報のページを開くと下の方に著作権表示にウェザーマップ社の記載があります。
Yahoo天気予報のページもWEB広告が表示されているため、ビジネスモデルとしてはtenki.jpと同じといえそうです。元々ALiNKの代表取締役がYahoo天気予報のフルリニューアルを手掛けていたこともあり、同じように天気予報メディアで収益化の知見ありますよというアプローチで日本気象協会に営業支援をしていたと推測します。
ウェザーニューズ(4825)
同じ上場企業としてウェザーニューズと比較しておく必要があります。
天気予報は気象データの収集をした後にデータの解析と予測という流れで進んでいきます。
ALiNKの場合、気象データの収集(気象庁が持つインフラ)→データの解析と予測(日本気象協会)という流れになります。
一方でウェザーニューズは気象データの収集(気象庁のデータ+自社独自データ)→データの解析と予測(ウェザーニューズ社のAIを活用した予測モデルを利用)という流れになります。特に気象データの収集において独自に小型衛星を飛ばしたり気象庁が持つものよりリアルタイムで予測精度が高いレーダーを設置することがコアコンピタンスになっています。東京オリンピックでも気象面からの運営管理・対応策情報を提供していたことから天気予報の精度で少なくとも日本ではNo.1であると言えそうです。また、ALiNKは広告収入がメインでしたが、ウェザーニューズは海運会社に安全な航路を提供したり、航空会社に気象情報を提供して運営サポートをしたりとBtoBによるビジネスが売上の半分以上を占めています。
直近一年間のALiNKとウェザーニューズの相対チャートです。ウェザーニューズは新高値間近なのに比べてALiNKは底値間近の推移となっています。まぁ制度の高いウェザーニューズの気象情報があれば日本気象協会の情報いらないですもんね・・・、日本気象協会と同じ船に乗るALiNKが共に沈んでいくだろうと株価的にも評価されているようにみえます。
もしやALiNKとウェザーニューズは逆相関なのではと思い調べたところ、必ずしもそうとはいえないようです。
銘柄名 | ALiNK | ウェザーニューズ |
---|---|---|
株価 (09/24) | 1,702.0 円 | 6,810.0 円 |
売買単位 | 100 株 | 100 株 |
時価総額 | 36 億円 | 807 億円 |
売上高(2021/02) | 6.1億円 | 188億円 |
営業利益 | 2.23億円 | 26億円 |
市場 | 東証マザーズ | 東証1部 |
決算期 | 2022/2 | 2022/05 (12か月) |
会計基準 | 日本 | 日本 |
株主優待 | なし | あり |
予想PER | - 倍 | 39.3 倍 |
PBR | 2.40 倍 | 4.87 倍 |
予想配当利回り | 0.00% | 1.47% |
実績配当利回り | 0.00% | 1.47% |
ROE | 13.69% | 12.52% |
ROA | 12.74% | 10.76% |
ROIC | 9.42% | 11.74% |
EV/EBITDA | 10.9 倍 | 21.7 倍 |
自己資本比率 | 93.40% | 86.80% |
両社とも財務体質は自己資本比率85%以上と良好です。ウェザーニューズの方が営業利益率が低めに出ていますがレーダーを設置したり衛星を打ち上げたりと設備投資による減価償却が8億あるため押し下げていることと、天気情報を元にサポートをしているため人がある程度必要な商売になることが関係しています。EV/EBITDA倍率ではウェザーニューズが高いですが、ウェザーニューズの強みと今後の成長性が反映された結果でしょう。
事業のリスク
- 日本気象協会との「「tenki.jp」の運営に関する業務提携契約書」に基づく運営に依存しているため、日本気象協会との関係が悪化した場合は致命的な事業リスクとなります。この契約は1年ごとに自動更新される契約のようです。仮に日本気象協会が他事業者と天気専門メディアを立ち上げた場合はアプリやWebサイトの著作権はALiNKに帰属するため、他の民間事業者から天気情報を取得して別の天気予報専門メディアを立ち上げる方針とのことです。ただ新規メディアを立ち上げた場合、知名度もなくSEOも弱いため現実として非常に厳しいでしょう。
- システムが止まるリスク。さくらインターネットのデータセンターを利用して稼働しているとのことです。
- 従業員が17名と小規模組織のため、欠員が生じた場合は事業に支障が出る恐れあり。
成長可能性
直近決算資料では以下に言及がありますが正直今までとやっていることが変わらず、成長に期待できません。
- 積極的な回遊施策を導入しPV数向上
- 課金による売上比率を高め、安定的な収益確保(登山天気.jpというアプリが月額課金アプリとなっている)
ただ今期を攻めの1年、投資の1年にするというスライドがあります。BSの内容的には自己資本比率93%でキャッシュを11億持っており、営業利益率は40%近くという低成長キャッシュリッチな会社のため、現金を利用してシナジー効果のある新規事業に期待したいところ。社長のTwitterアカウントをみるに、今期非開示としていた予想を次の10月の決算で開示するとともに成長戦略についても詳しい言及がありそうです。不確定要素としていたオリンピックも終わりましたからね。
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